「絵がうまくなりたい!!」
美術教室では、小学生ぐらいになると、そんな言葉をよく聞きます。
幼児の頃は、「絵が好きだから!」「おえかき楽しいから」とうまくなることよりも、自分の好きな事、楽しい事を思いっきり体感して、そしてたくさん褒めてもらう。
褒めてもらう事で、「よし!僕はすごいんだ」「僕はもっと頑張れる」「いっぱい頑張る事が楽しい」と自己肯定感を高めていきます。
でも、心の成長とともに、「もっとうまくなりたい!」という気持ちになりますね。
好きなキャラクターを真似してみたり。学校の図工で1番を目指してみたり。憧れの先生のようになりたい。と思ったり、さらに次のステップを目指していきます。
美術教室では、普段様々なカリキュラムを通して、遊びながら、楽しみながら、自己肯定感を高めながら、うまくなっていく。子ども達の昔からの「絵が好き!」「楽しい」の気持ちを大切にしながら取り組んでいます。
美術教室では年に数回、デッサンやクロッキーを行います。
クロッキーは、モデルさんを前にして、みんなで取り囲みながら5分間や10分間、形や表情、フォルムなどを紙に写していきます。
今回は、頭の体操をしながら絵が上手くなるトレーニングをご紹介します。
絵が上手くなるには、やはりたくさんの絵を紙に描いて、描けば描くほどうまくなる。
そう考える方が多いと思います。確かに、たくさん絵を描くことはとても大切ですし、描いた分だけ、「いい線」を描けるようになります。
実はもう一つ大切なことがあるんです。
それは、「見る力」ではなく「観る力」
モチーフやモデルや風景を前にして絵を描くとき。皆さんも一生懸命対象物を見ながら、スケチッブックやキャンバスに向き合うと思います。
【モチーフをしっかり「みて」描きましょう!】
このとき、「見る」ではなく、「観る」ができると絵が格段に上手くなります。
人は、知っているものを絵に描くとき、そのほとんどを「記憶」で描きます。
モチーフやモデルをみているはずなのに、実は記憶で描いています。モチーフをみているつもりが、画用紙を見ている時間が9割。モチーフを見ている時間が1割ぐらいかもしれません。
絵を上手い人は、実はこの「観る」力があるんです。
今回美術教室で行った「クロッキー」は、「観る」力をつけるクロッキーです。
【ここに「瓶」の絵があります。この絵を写しましょう。】
あ、でもこの瓶の絵を逆さまにします。逆さまで見ながら、そのまま逆さまに写してください。
モチーフを逆さまにすることで、これまで知っている「瓶」が全く初めて見るものに変わります。
「あー知ってる知ってる」とよく見ないで描いていた絵が、逆さまになることで、「よく観ないと描けない」モチーフに変わります。
次のレベルは「親子の犬」
犬も見たことがあるし、自分の知っている犬を描くことができます。この犬の絵も逆さまにすると、「犬」ではなくしっかり観ないとなんだかわからない「初めてみる形」になってしまいます。
教室の子供達は、もうパニックです。
ちゃんと観ることができているのか。作品の向きを正しい向きに変えると、答え合わせができます。
ほんの10分、この逆さまの絵を描き移すだけで、ヘトヘトです。
でもこのトレーニングを重ねると、ものを見ながら描くときに、これまで「画用紙に向かう時間が9で、見る時間が1」。だったことが、「画用紙に向かう時間が2で観る時間8」ぐらいに変わります。
観る時間が増えることで、しっかり観る力をつけることができますので、絵が劇的にうまくなります。
大人の方で「絵が苦手」と話される方のほとんどが実はこの「観る力」を鍛えることでうまくなることができます。
ただし、この観る力は、絵の発達段階ではかなり高度な段階です。
幼児の子ども達には、まだ自分が知っている形や、想像した形をたくさん追いかけてもらうことが大切だと考えます。
しっかり発達段階を踏んでから、チャレンジしてみるようにしてみてください。
ぜひ、大人の方もオススメです。感覚的なところを司る右脳を刺激してくれますよ。
このクロッキーの課題は、↓のURLから見ることができます。
美術教室 武田一城
投稿日 : 2021年3月27日