子どもは、実はとても繊細なバランスの中で生きています。
お母さんやお父さんに守られている安心と、
少しずつ自分でやっていかなければならない現実のあいだで、
ゆらゆらと揺れながら成長しています。
でも、どんなに大切に思っていても、
親が子どものすべての気持ちを受け止め続けることはできません。
忙しいときもあるし、余裕がないときもある。
それは当たり前のことです。
そんなとき、子どもを支えているものがあります。
それが「移行対象」と呼ばれるものです。
例えば、スヌーピーに登場するライナス・ヴァン・ペルトがいつも手放さずに持っている“安心毛布”。
あるいは、
「これがないと出かけられない」と言って、
必ずカバンに入れて持っていくぬいぐるみ。
きっと、思い当たるものがあるのではないでしょうか。
それらは、ただの“モノ”ではありません。
子どもにとっては、
どんな気持ちも受け止めてくれる存在です。
たとえば、
腹が立って、そのぬいぐるみをポンッと叩いてしまう。
悲しくて、涙や鼻水でぐちょぐちょにしてしまう。
甘えたくて、ずっと抱きついてベタベタしている。
それでも、そのぬいぐるみは
嫌がらないし、怒らないし、離れていきません。
どんな扱いをしても、関係が壊れない。
ここが、とても大事なところです。
子どもはその中で、
「こんな自分でも大丈夫なんだ」
という感覚を、体で覚えていきます。
そして実は、ここからが一番大事なのですが、
この「安心できる対象」があるからこそ、
子どもは一歩外の世界へ踏み出していくことができます。
安心があるから、挑戦できる。
受け止めてもらえる場所があるから、失敗できる。
つまり、
この体験が「学び」や「成長」の土台になります。
美術教室で子どもたちが描く絵や作る作品は、
単なる“上手・下手”の話ではありません。
その子自身の気持ちや世界が、そのまま形になったものです。
ときには、うまくいかない気持ちや、
言葉にできない思いが、そのまま表れていることもあります。
だからこそ、私たちは
「上手にさせること」よりも大切にしていることがあります。
それは、
その子がその子のままでいられること。
そして、
安心して表現できることです。
その積み重ねの中で、子どもは自然と力をつけていきます。
自分で考え、自分で試し、自分で見つけていく力です。
それは、これからの時代において
何より大切な力だと、私は考えています。
どうか、お子さんの作品を
「うまくできたかどうか」だけで見るのではなく、
その奥にある気持ちや時間にも、
そっと目を向けていただけたら嬉しいです。
その一枚一枚が、
お子さんの心を支え、未来へつながっていく大切なプロセスだからです。

投稿日 : 2026年4月1日